コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践
わかりやすくまとめている方がいたので
[書評]コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践
実践コミュニティ
2015/02/21 23:43
■ 実践コミュニティの構造モデル
実践コミュニティの基本的な構造は「領域」、「コミュニティ」、「実践」という3つの基本要素の組み合わせになっています。
実践コミュニティはそれが所属する組織(企業)によって名称や形態が異なる*2のですが、著者らはそれらのコミュニティに共通した3要素から成る構造モデルを定義することで、実践コミュニティとその他のコミュニティの違いを明確なものにしています。
実際のところ、これらの要素について細かく見ていかないと、実践コミュニティが何なのかはなかなか理解しにくいように感じたので……それぞれの要素についてここで簡単にまとめておきます。
▽ 領域(domain)
領域とは、そのコミュニティで扱うべきテーマの定義のことです。
領域は明確に定義される
- 領域を明確に定義することで、コミュニティの目的と価値をメンバやその他の関係者に確約し、コミュニティを正当化することができる。
- 領域は抽象的な関心の対象ではなく、メンバが現実に直面する重要な課題や問題から成る。
- ただし、メンバは領域に対する見解を明確に表現できる場合も、できない場合もある。世界やコミュニティの変化に応じて、領域もまた徐々に発展していく。
メンバ間で領域を共有する
- メンバは領域の境界や最前線を理解することで、何が共有するに値するか、どのように自分の考えを提示すべきか、どの活動を遂行すべきかといったことについて、的確な判断を下すことができる。
- 領域に対するコミットメントのないコミュニティは、友人同士のグループに過ぎない。
▽ コミュニティ(community)
「コミュニティ」とは、特定の領域に関心を持つ人々の集まりのことです。
定期的な情報交換の場
- 実践コミュニティを築くためには、メンバが領域の重要な問題について定期的に情報交換する必要がある。
- メンバは定期的な相互交流を通して、領域に関する共通の理解や実践への取り組み方法を生み出す。
信頼感を醸成する場
- コミュニティが重要な要素である理由は、学習が理知的なプロセスというだけではなく、帰属意識にかかわる問題でもあるため、
- 強く結びついたコミュニティでは、メンバが互いを尊重し信頼しているために、自発的にアイデアを共有し、無知を露呈し、厄介な質問をし、注意深く耳を傾けようという気になる。また、意見の不一致があっても結びつきが損なわれず、逆に対立を利用して学習を深めることができるようになる。
自由な雰囲気を持つ場
- 実践コミュニティの成功は個人の情熱に負うところが大きい。そのため、参加を強制しても効果はない。
- コミュニティへの加入は自発的でも強制的でもよいが、実際に関与する度合いを決めるのは個々人でなければならない。
▽実践(practice)
実践とは、コミュニティのメンバが共有する一連の枠組やアイデア、ツール、情報、様式、専門用語、物語、文書などのことです。つまり、実践にはコミュニティの暗黙知と形式知の両方が含まれます。
共通の基礎知識の確立
- 共有された実践が果たす役割の一つは、ある特定の領域で物事を行うために正規のメンバ全員が習得すべき共通の基礎知識を確立する、というものである。
- 共通の基盤を確立し、既によく知られていることを標準化することによって、実践コミュニティのメンバは創造的なエネルギーをより高度な問題に傾けることができるようになる。
実践はコミュニティに蓄積される
- 文書やツールとして体系化できる知識(形式知)を共有しても、それを自分の環境に合わせて適用するには、同じような状況に直面する人々との交流から得られる暗黙知が必要(1990年代に、IT主導のナレッジマネジメントが失敗した理由)。
- 実践コミュニティは知識を単なる物体に貶めるのではなく、メンバの活動や相互交流を通して、実践という形でコミュニティの中に蓄積する。
また、上記の3要素は実践コミュニティを定義する要素であるだけでなく、メンバが実践コミュニティに参加する動機を表す要素にもなっています。
- 「領域」に関心があって、その発展を見守りたいがために参加する人
- 「コミュニティ」に属すること自体に意義を感じて参加する人
- 「実践」について学びたい人
実践コミュニティからイノベーションが生み出されるロジックについて書かれたものは無いかしら。