共通科目「社会理論と社会システム」より社会的役割における自己の形成
バーガー:
「個人の生涯は、その誕生の瞬間から他者と自己との関係の物語である」
=人は他者との相互行為のなかで自己を形成していく。
「われわれは、他者の声を内在化することによってのみ、自分自身に話しかけることができる。・・・われわれは、他者を通してのみ、自分自身を発見できるようになる。」
クーリー:
個人の得る「自己の感覚」は、他者による認知、すなわち鏡としての他者に映った自己に依る。これを鏡に映った自己という。
ミード:
社会化(socialization) の過程にとって重要なポイントは、他者の役割を取ること。幼児は母親の役割を模倣により獲得しようとする。他者の役割を取得し、内面化させた他者との相互行為の中で自己を形成していく。
自己は客我としてのMeと主我としてのIとのそうっご作用として把握される。Meとは役割取得を通して獲得された他者の期待や態度であり、IとはMeへの創発的な働きかけである。Meに働きかけたIは、次の瞬間Meに組み込まれる。IとMeは時間を追って、らせんを描きながら継起する過程である。
【一般化された他者】(generalized other)
認知または内面化される社会的期待ないし規範の総体。「一般的他者」とも訳される。幼時からの相互作用の積み重ねを通じて、人は様々な他者の自分に対する役割期待を取り入れて、自我を形作っていく。このことは、親や友達など個々の他者の役割期待の内面化にとどまらず、総合・一般化の過程を経て、社会一般の自分に対する期待、もしくは社会的規範の内面化へと進む。このように一般化された他者の役割期待の内面化が行われて「me」が形成され、初めて社会的自我を持った人間が形成される。
【重要な他者(意味ある他者)】(significant other )
他者の中でも社会化の過程で、大きな影響を持つ人物。例えば両親や遊び仲間、教師などがそれに該当する。諸個人は重要な他者の体現する役割・態度と同一化し、それを内在化させることで、制度的規範を学習する。「一般化された他者」と異なり、より具体化・特殊化された文脈の下で、個人と文化を媒介する。
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自己とは、他者への応答の束であり、その束が一定の特性を示すとき、それはパーソナリティと呼ばれるのである。